アプリ開発者が押さえておきたいWebGPUとWebアプリケーションについて

デジタルは常に進化しています。特に近年ではWebアプリケーションの開発や発展がとても活発です。

ブラウザベースのツールは、これまでのアプリケーションよりも使い勝手が良く、現在ではデジタルインタラクションの一つとしてとても重宝されています。

本記事では、WebGPUがどのようにWebアプリケーションの可能性を広げ、私たちの生活をどのようにより良いものにしてくれるのか、その特徴や仕組みをご紹介します。

クラウドアプリケーションとも呼ばれる、Webアプリケーションは、Google ChromeやWindows Edge、SafariなどのWebブラウザ上で動作するソフトウェアで、インストールやダウンロードが一切不要であるという特徴があります。

近年では、FigmaやSpline、Photoshop Web、Google Docs、Slack、Webflow、Discordなど多くの人気なサービスがWebアプリケーションとして提供されています。その成長は著しく、現在も急成長している分野です。

Webアプリケーションは、デザインツールやWeb上でのコラボレーション、生産性の向上やコミュニケーションの向上など、あらゆる分野で使用されており、そのアクセスの容易さと直感的なUXから爆発的な人気を得ています。

人気があるだけでなく、テック業界を牽引する世界中の投資家からも大きな注目と資金を集めています。

例えば、Web上で3Dオブジェクトを作成することができるSplineは最近1500万ドルもの資金調達を行い、ウェブアプリケーションに対する投資家の大きな期待と注目を表しています。

さらに、最終的には実現しませんでしたが、AdobeがFigmaを約200億ドルで買収しようとしたことも、現代のデジタル業界においてWebベースで動くプラットフォームに大きな価値と可能性があることを強調しています。

Webアプリケーションは、従来のデスクトップアプリケーションに比べて多くのメリットがあります。もっとも大きな利点は、ユーザーフレンドリーであることが挙げられます。URLをシェアするだけで簡単に共有することができ、インストールが不要なため、とてもアクセスがしやすいサービスとなっています。

アクセスのしやすさはユーザー体験を向上させるだけでなく、コンバージョン率の向上にもつながります。ダウンロードやインストールなどの難しい操作をなくすことで、「試しやすい」状況を作り出し、より多くのユーザーが利用する可能性とエンゲージメントを高めます。

さらに、Webアプリケーションはサービスを提供する企業が自動でアップデートすることができ、ユーザーは手動でアップデートする必要がありません。常に最新の状態でサービスを活用することができるのです。

もう一つの大きな利点は、手数料です。通常、モバイルアプリをリリースする場合、各アプリストアが定める手数料やロイヤリティ料を支払う必要がありますが、Webアプリケーションでは必要ありません。これにより、開発元となる企業はより多くの収益を得ることができ、その収益を開発費に回すことでユーザーにとってより良いサービスを開発することができます。

Webアプリケーションには多くの利点がありますが、課題もあります。特に、クオリティが高いビジュアルを使用することや重い計算を必要とする複雑なサービスを開発する場合、パフォーマンスの限界があることがわかっています。

これは、現在のWebアプリケーションで使われているWebGLが最新のものではなくなり、複雑なグラフィックの可能性を制限していることが要因です。

WebGLはこれまで、WebブラウザにおけるGPUアクセラレーションの中核を担っていました。しかし、10年以上前に開発された技術であるため最新のGPU機能に対応するには不十分であり、複雑な処理を必要とするWebアプリケーションでは悩みの種となっています。

パフォーマンスの向上

WebGPUはWebアプリケーションにおけるグラフィックスと演算能力を大幅に向上させます。

最新のGPUハードウェアをフル活用できるように設計されたWebGPUはWebアプリケーションのパフォーマンスと効率性を劇的に改善するのです。

つまり、WebGPUを搭載するアプリケーションは、より複雑なグラフィックスと計算を管理し、よりスムーズで視覚的にインパクトのある体験を可能にします。パフォーマンスの最適化によりローディング時間の短縮や応答性の向上などユーザー体験に大きな影響を与えてくれます。

コストとサーバーの負担を軽減

見落とされがちなWebGPUの利点の一つとして、サーバーの負荷とコストを削減してくれる効果があります。

WebGPUは複雑な計算をサーバー側ではなく、ユーザーのデバイス上で直接処理することを可能にします。その結果、エンドユーザーにとって処理時間やローディング時間が短縮されるだけでなく、サーバーサイドの重いプロセスを軽減させることにも繋がります。

これにより、企業はサーバーやインフラに関連するコストを削減することができます。特にサーバーの容量やリソースが限られている中小企業やスタートアップ企業にとってとても有益な利点です。

WebGPUを使ったアプリケーション開発を進めることで、これまでサーバーのコストに苦しんでいた企業や個人が、より高度で社会的にインパクトのある開発に取り組むことができ、デジタルエコシステムにとってより良い競争環境が生まれると考えられています。

高度なAIに対応

WebGPUは、WebアプリケーションにAIを搭載する際に必要な環境と機能を提供します。AIモデルや機械学習モデルがWebブラウザ上で動作することを可能にし、さらにユーザーの各デバイス上でデータを処理することでプライバシーやセキュリティの強化にも貢献します。

WebGPUにより、開発者やエンジニアはより簡単にAIを活用することができ、Webアプリケーションに高度なAIが搭載されることになるのです。

Code Once, Deploy Everywhere 〜一つのコードでどこへでも展開〜

「Code Once, Deploy Everywhere」（一つのコードでどこへでも展開できる）というのは、WebGPUの目指すスローガンです。一度、WebGPUを使って開発を行えば、そのコードを様々なデバイスやプラットフォームで使うことができる、ということを意味しています。これは、エンジニアによる開発期間の短縮やリソースを大幅に削減し、効率的な開発ができることにも繋がります。他のプラットフォームにも展開できることで、将来的にサービスの規模を広げることもできるのです。

以上のことから、WebGPUはパフォーマンスや機能の制限を行うことなく、Webアプリケーションをさらに魅力のあるサービスにするための最適なソリューションとなります。

WebGPUを活用するには、GPUに関する専門的な知識や理解が必要だとされています。さらに、新しい技術であるWebGPUの情報はまだまだ少なく、正しい情報を手に入れるのが難しい状況です。

一方、Utsuboでは、WebGLとWebGPUの発展に貢献している経験から、適切にサポートすることが可能です。また、すべてのユーザーがWebGPUに対応しているデバイスを持っているわけではないことを考慮して、代替案やWebGLとの併用も重要視しています。

私たちのチームは、世界中の大企業や何百万人のエンジニアに利用されているThree.jsのライブラリを提供し、Webアプリケーションの開発に必要なThree.jsとWebGPUの統合に関しても貢献しています。

オープンソースコミュニティに貢献することで、Three.jsがWebGPUに対応することを実現させ、すべてのWebアプリケーション開発者にとって、WebGLとWebGPUを組み合わせた開発ができるようにサポートしています。

WebGPUはWebアプリケーション開発を促進し、3Dモデリングなどの高度な開発を可能にします。さらにAIモデルの搭載やユーザーのデバイスでコンピューティングができることから、Webアプリケーションで実現できることが広がります。

これまではデスクトップでしか扱えなかったアプリケーションやGPUを多く使うソフトウェアがウェブ上で完結することでアプリ開発業界に大きな変化をもたらすでしょう。

Webアプリケーション開発で注目されている分野の一つは、音声編集ソフトウェアです。WebGPUはリアルタイムで音声処理とエフェクトを編集することができ、まるで音楽スタジオの機器のような機能をウェブ上で利用することができます。これによりミュージシャンやポッドキャスト、音楽プロデューサーは特定のデスクトップアプリではなく、Webブラウザでアクセスできるツールでプロフェッショナルな仕事を行うことができます。

少し前にSnapchatで流行したリアルタイムのカメラエフェクトをご存知でしょうか。WebGPUの搭載はこのようなカメラと関わるエフェクトにも活躍します。より複雑でクオリティの高いエフェクトを使って写真を撮ったり、オンライン会議、YouTubeのライブストリーミング時などに活用できるカメラエフェクトを使用することでユーザー同士のコミュニケーションがより楽しめるものになります。

ビデオ編集の分野でもWebGPUにより進化したWebアプリケーションが活躍します。高解像度の映像や複雑な映像編集を処理できる動画編集ソフトウェアがWebブラウザでリリースされることで、誰でも高度なツールにアクセスすることができ、動画編集の民主化に大きく貢献します。スペックの高いPCではなくても動画編集を楽しむことができるのです。

また、一見デジタルとは関係が薄そうな建築業界もWebGPUの恩恵を得ることができます。建築家や建築デザイナーはWebアプリケーションを使って3Dモデリングやレンダリングを行うことで、どこからでもアクセスすることができ、しかもFigmaのようにリアルタイムで共同で作業することが可能です。

WebGPUは科学や研究分野での活躍も期待されています。高度なGPU処理能力によって数値流体力学や分子モデリング、環境シミュレーションなどを行う研究者や科学者がWebアプリケーションを使った研究を行うことができます。

Webアプリケーションで複雑なシミュレーションを行うことで、世界中のどこからでもアクセスすることができ、国や機関の垣根を超えた研究者同士のコラボレーションを促進します。従来は専用のソフトウェアに限られていましたが、より研究しやすい環境を整えることができるのです。

ビッグデータアプリケーション（Big Data Applications）では、WebGPUを使ったインタラクティブなダッシュボードやリアルタイムデータ分析、高度なグラフ化を含む大規模なデータ処理やビジュアリゼーションが便利です。データを可視化することで企業は膨大な量のデータの分析や分析結果の共有をより分かりやすく行うことが可能です。アクセスしやすく、インタラクティブなデータビジュアリゼーションは、直感的に分かりやすく説得力のあるトレンドやパターンをデータから生み出します。数字だけでは分かりにくかったデータの分析が視覚的に理解できるものとなるのです。

仮想現実（VR）や拡張現実（AR）にとってWebGPUの発展は必要不可欠となります。なぜなら、デベロッパーは外部のプラグインや特定のハードウェアを必要とせず、Webブラウザ上で体験することができる没入型のVR/ARを制作することができるからです。

VRやARの発展はインタラクティブでより理解が深まる体験型の教育や不動産のバーチャルツアー、小売店でのバーチャル試着や製品のデモンストレーションなど様々な業界に役立ちます。

さらに、ゲーム開発者はWebブラウザで動くゲームを開発することができます。これまではゲーム機や高性能なPCでしか表現できなかったグラフィックのクオリティや複雑な仕組みを活用できることで、Webブラウザのゲームが今後大きく成長していくことが考えられます。誰でもダウンロード不要でプレイできるアクセスのしやすさと、グラフィックを最大限に活用できる没入型のゲーム体験はより多くの人が楽しめる環境とゲーム業界自体を底上げしてくれる絶好の機会となります。

よって、WebGPUの登場はWebアプリケーションにとって大きな利益となるだけでなく、ゲーム開発やシステム開発の方法を大きく変化させる重要な技術であることがわかります。

今回の記事では、Webアプリケーションやソフトウェアの開発に関わるすべての企業や人々にとってWebGPUがいかに重要であるかを紹介してきました。WebGPUは、競争力を増すデジタル業界の中で生き残っていくために、確実に取り入れておきたいトレンドとテクノロジーの一つです。

WebGPUの導入に向けて、UtsuboのようなWebGPUの専門知識を持つ企業と提携することも可能です。Utsuboは、WebGLに関する豊富な経験とWebGPUの発展に貢献している知見から、導入や活用をサポートすることができます。

WebGPUはWebアプリケーションの可能性を広げるだけでなく、すべてのウェブ上のコンテンツが、今後どのように発展していくのか、未来のデジタルコンテンツはどうなっていくのか。そういった大きな可能性と期待が世界中から集まっている技術です。

Webアプリケーション開発にWebGPUを活用してみたい場合はぜひ一度Utsuboにご相談ください。WebGPUの最前線で活躍する専門家がサポートいたします。